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【ゼノブレイド3/ストーリー感想】サブクエのプレイ必須。終わりよければ全てよし。

総合的に評価したレビュー記事はこちらからご覧ください。

作品のネタバレを含みます。まだプレイしてない方や全クリしていない方はブラウザバッグ推奨です。


サブクエが評価を180度変える

様々なところで見られる「ストーリーが薄っぺらい」という意見。

実はいうと、私自身もラスボス戦の最中は「あれ…?これで終わるんだ」と思った自覚があってゼノブレシリーズとしてはややボリューム不足感が否めないというか、フィールドの制作などに時間をかけられたのかなという印象が強かった。

なので、メインストーリーがゼノブレシリーズとして見たとき最高のシナリオではなかったという意見には私もおおむね同意だ。

しかしながら本作はサブクエスト(特にヒーロークエスト)の出来が前作の比にならないほど良くなっており、これをやるかやらないかで評価が大きく変わるのもまた事実であると思う。

例えば、本編で出てくるシャナイアが関連するクエストをやると、なぜ彼女があれだけ劣等感を抱えていたのかが分かるし、エンディングで死んだはずのエセルが出てきた理由もサブクエをやると分かる。

そう、この世界で起きる全てのことはサブクエで判明することがほとんどなのである。

このように「メインストーリーで描くべきだったのでは?」と思うサブクエが本作にはいくつもあった。もしかしたらこのサブクエストを重視する作風は高橋監督の言っていた「ゼノブレイドの未来の姿」なのかもしれない。

ただ、本作はその作風をあまりにもプレイヤーへ押し付ける感じがした。せめてエセルに関してはメインで触れても良かったのではないだろうか。

ちなみにサブクエがメインクエと同じくらいの良い出来である他作品といえば、ウィッチャー3もあるが、私の感覚でいうとあれよりサブクエの重要度は高い。もはやサブクエという名のメインクエストなのだ。

敵に魅力がない理由には納得だがラスボスは捻りが欲しかった

本作を最後までプレイした方ならこう思うはずだ。

メビウスってなんか自分のためだけに動いているし、小物だらけじゃない?」

正直私もそう感じていたのだが、これに関してはインタビューを読めば分かる。

以下はインタビューでの高橋監督の発言


これまでは敵を
良いか悪いかというようなハッキリした形でなく、
あえて曖昧に表現するようにしてきました。
そうすることで、敵への理解や没入感が生まれますし、
そこが物語の面白さだったりするとも思っています。


でも今回は違った切り口で描いてみたかった。
というのも、実は「力」にもいろいろな形があって、
理念や正義や大義ではなく、
面子(メンツ)とか欲とか、実はシンプルなもののほうが
多いんじゃないか、と思ったんです。

ほうほう、そういうことか。つまり善悪か分かりにくいように曖昧に敵を描く手法から、単なる欲で動く“悪“として敵を描く手法に変えたのか。相変わらず高橋監督はストーリーに限っては自分の軸が主体だなと感じさせる(もちろんいい意味で)

話がズレたが、私としてはこのインタビューを見て敵に魅力がない理由には納得した。

だが1つ言わせてほしい。

流石にラスボスのゼットに関してはもうちょっと補足があっても良かったのではないだろうか?若しくは、ラスボスだと思わせておいてただのミスリードで真ラスボスを登場させるとか。

いや、とりわけ本作はラスボス戦での思い出がないのだ。心の中では「存在は想いであろうと実は裏話があるのでは?」とか「あまりにもラスボス臭を匂わせているから真のボスがいるのでは?」と思いながらプレイしていたのだが、

蓋を開けてみればゼットが本作のラスボスだったという。別に残念と言うわけではないのだが、期待しすぎたなというか「おっ…おうそうなのね」という感想で落ち着いてしまった。

過去作品と比べることが良いのか悪いのかは分からないが、少なくともゼノブレ2のラスボス戦の方が印象に残っているし、主人公とラスボスがそれぞれ持つ価値観のぶつけ合いはたまらなく面白かったと思う。

対して本作のラスボスはなんというか、ただただ相手を捩じ伏せたり支配することしか考えていないというか、相手の意見を聞く姿勢さえなく自己中でしかないから感情移入しようにも無理だった。

ムービーが長すぎることの弊害

正直なところ、私は本作のムービーの長さについて不満に思うことはなかった。

多分、ムービーが長いことで知られる小島監督の作品や洋ゲー、そして前作の2をプレイしていたから「長いムービーへの耐性」がついていたんだと思う。それにゼノブレ3はずっと楽しみにしていた作品だったから、やれるだけで満足だったのも事実だったわけで。

ただこれは私の見解であって、世間の評価を見るとやはり「ムービーが長い」という点は不満につながる。

問題点はここからだ。本作は開発者がそのムービーが長いという事実を知っていたはずなのに、短く区切らないからムービーをスキップしたらだいぶ先まで進んでいて話の脈絡が全く掴めなくなった人がとても多い。

1番多い被害案件は五話の牢屋シーンだろう。その場面ではノアたちが牢屋から脱出するために、合計3回ほど牢屋のドアをガチャガチャしないといけないのだが、この3回中3回目の時に誤ってムービースキップしてしまうと、なんと五話自体が終了する鬼畜仕様になっているのだ

もちろん、ムービーを細かく区切ることさえすればそんなことは起きなかったと思う。

よって、故意であろうとなかろうとムービーをスキップしたことによりストーリーが薄っぺらいと感じる人は少なからずいるのだ。これはムービーが長いからこそ生まれた弊害だと思う。

ゼノブレ3に限らず、全てのムービーゲーにいえることだが、何でもかんでもムービーにした方が予算が浮くのだろうか?テキストで済むようなことはムービーにしないほうが両者が得のように思えるのだが…。

ラストエンディング

最後に特筆したいのはラストの演出。これを書くためだけにこの記事を作ったと言っても過言ではない。それぐらい素晴らしいエンディングだった。

古臭いだとかダサいなどと言われていたのも事実だが、私にとっては映画のワンシーンといっても信じれるほど素晴らしい天才的な演出だったと感じたし、私が今年やったゲームの中で1番印象に残るエンディングであったと思う。

ようやく異なるものである同士、お互いの価値観をすり合わせて、“永遠の今“にすがるゼットを6人全員で打ち倒したというのに倒したら離れ離れ。

単に離れ離れになるのならいいのだが、ノアやミオたちは旅をしているうちにそれぞれ相手のことを好きになっていて、青春劇を迎えているのに離れることになってしまったのだ。プレイヤーとしてはとても胸が痛い結末である。

ただ、プレイ中はこの「青春をしていた若い中高生が離れて過ごすことになる」ことにどこか既視感があるなぁと感じていた。そして冷静になった今、改めてエンディングを見返してみるとその既視感の正体がすぐに分かった。

名作映画「君の名は」だ。あれもお互いに恋をしていた瀧(たき)と柚葉(ゆずは)が世界の都合により別れることになってしまう。さらにはお互いの名前を忘れてしまって。まぁ結局再会するが。

それはともかく、ノアやミオはその離れ離れになるという事実を“覚悟“した上で、それでも世界を変えたいという希望を持ち倒した。なんとも皮肉な話ではあるが、むしろ時間がなく引き返すことが不可能な彼らにとってはその選択をせざるを得なかったとも思う。

倒したからといって今すぐに世界が2つに分かれることはなかった。だが、猶予は短い。一息ついたのち最後はお互いの顔を見て笑ってサヨナラの準備をする。

でもたった3ヶ月、されど3ヶ月の日々を共に過ごしてきた彼らがそんな簡単に別れることはできない。

案の定、世界が1つから2つに分かれる瞬間、ケヴェス側であった三人とアグヌス側であった三人は共に見つめ合いながら、一生懸命に走る。ちなみにこの時のタイオンの必死さは作中で随一かもしれない。あまり感情を表には出さないタイプだと自白しているからこそ必死になる様子が印象的だ。

2つの世界はそれでも分かれるのをやめなかった。だが、諦めずに走っていく6人の姿には涙なしでは見れない。

初めて出会ったシーンとの対比はシナリオとして完璧だと思う。初めてお互いを見た当初の彼らは相手を殺そうと復讐や憎悪の想いで動いていたのに、お互いを知って分かり合えた彼らを最後に動かしていたのは紛れもない“愛”や“悲しみ”の想いがあったからだ。

ちなみにこの対比は、アイオニオンの旅で彼らが本当に成長したことを裏付けているシーンでもある(ただしサブクエをやらないとそうは思えない)

さて、この走る様を第三者目線で見ているプレイヤーは、「こんな別れ方ありなの?」だとか「もっといい方法はないのか」と思うのが普通だと思う。

私だってそう思った。なんならこの記事を書いている今この時でさえ、いっそのこと3の世界がそのまま1つのままだったらプレイヤーからすれば気持ちの良いものになっただろうなぁと脳裏によぎる。

でも前作、初代をプレイしているプレイヤーならば「世界が1つのままだったら、ニアやメリアは元いた世界に帰れなくなる」と思ってしまうのもまた事実。

何が言いたいのかというと、ラストシーンは前作や初代をプレイしていれば世界が2つに分かれることがそれほど悲観する事実でないことにプレイヤーが気づける描き方をしているのだ。

これに気づいた時の驚きは言葉では表せれない。このような描き方をできるのは15年という長い年月をかけて生み出されたゼノブレイドシリーズにしかできないと私は思うのだがどうだろうか。

「いつか会いに行くよ、必ず」。ノアがミオに放ったこの音葉の重みは考えただけで押し潰されそうだ。いったいどんな想いを乗せて言ったのか……。

オリジナルストーリーは未来に起こる明確な答えを提示するか

結局のところ、最後のシーンではオープニングで時が止まっていた1世界が再び動き出したことが確認され、存在しないはずの笛の音にノアが微笑み終わった。

さて、これで本編は一応終わりということなのだが、あのような終わり方だとDLCのオリジナルストーリーが前日譚なのか後日譚なのかが気になるところ。

私としては後日譚がいいなぁと思っている。ゼノブレ3としては最高のエンディングだが“ゼノブレの集大成“として見ると盛り上がるというよりは哀しいという気持ちの方が勝るからだ。

確かに後日譚だと、あのビターエンディングが無駄になるという意見もあるが、本編自体は誰が何と言おうとこれで終わりなのだから本当の意味で無駄になるとは思えない。

それに、どのみちDLCで本編ストーリーを補完する時点で「DLCありきのゲーム」と言われるのは目に見えているから、批判の的になるのは避けられないだろう。本作はあまりにも伏線を残しすぎているし尚更だ。

まぁ前日譚なのか後日譚なのかは他の記事で考察しようと思う。ぜひとも再会をすることを誓ったノアとミオの未来を高橋監督には描いてほしい。

ストーリー感想/締めくくり

本作のストーリーについて語りたいことはだいたい話せたと思う。

高橋監督がこれからやりたいことを感じられるストーリーの作り方や「ゼノブレらしさ」から脱却した本作のシリアスな世界観に沼った私。

ストーリーに問題点がないとは言えないが、それでも独特な世界観とファンサービスをうまく取り入れることができた素晴らしいストーリーだったと思う。

本作を全クリして、ゼノブレイドシリーズを支持しようとする気持ちが更に高まった。やっぱりゼノブレイドのストーリーは独特で色々な意見があって面白い。

続編は5年後くらいに発売だろうか、一体どんな世界線でどんな物語なのか。本当に楽しみである。

ここまで見ていただきありがとうございました。